1mmもクラシックもジャスも知らない女が、クラシックとジャズにハマった話
そんなこんなで、NHK交響楽団つくば公演で、リオ・クオクマンに惚れた私は、一週間後上野にいたのでした。
小曽根真&ピーター・アースキン
"Jazz meets Classic" with 東京都交響楽団
席はD席かな。東京文化会館公演のたしか4階。
高所恐怖症だと無理なくらい高いし、ステージも自分の席から死角になっちゃう位置でした。
D席だと学生さんが多いですね。音大生っぽいなーって専門的な用語の混じった会話がちらほら聞こえてくる中、一人リオ・クオクマンの登場を待ちました。
補足しておくと、小曽根真さんは、ジャズピアニストの方です。なので、小曽根真さんが仕切って、ジャズとクラシックを両方やるステージを開いたのです。
第一部はクラシック
リオ・クオクマン指揮のバーンスタイン「キャンディード」序曲
ぶっちゃけ、この日までバーンスタインの名前さえ聞いたことなかったですけど、この曲、めちゃくちゃかっこいいのです。各楽器の良さが、この数分間に全部入ってる感じで、リズムもメロディーも、もて余すことなくかっこいい。バーンスタインの自信ある顔が浮かびそうなくらいです。動画もいいのですが、個人的にはもう少しテンポ早いほうが好み。
この日もきゅんきゅん!しました。席は遠かったのですが、東京文化会館はちゃんと響いててくれました。
正直言って、暗くて重くて、不協和音のようで、序盤から中盤にかけて、タイトルに偽りなし、ってくらいに気分が沈みます。聞いているだけで気持ち悪くなる曲調です。
小曽根真がピアノ ドラムがピーター・アースキン 原曲を知らなかったのですが、ドラムって本来はいないんですね。だから、動画とイメージがちょっと違う曲でした。
ピーター・アースキンのドラムがよく聞こえてくる感じでした。
で、とにかく暗くて重くてなんだかよくわかんない曲なんですが
動画でいうと27分くらいからかな
仮面舞踏会のシーンに入るのですが、その音が、キラキラしていて、軽やかでポップな曲なのに、上品さと少しの憂いが感じられて、美しいのです。
いままで、どんよりさせられていたのは、これをよく聴かせるためだったのね!って思えちゃうのです!!
ため息が出るくらい、いいのです。しかも、小曽根真のピアノが入って少し効いたアレンジがさらに良くて。
クラシック一度しか生演奏を聴いたことがない。ジャスも知らないのに、ピアノの音が、輝いているのが手に取るようにわかってしまうのです。
私のお目当てだったはずのリオ・クオクマンが霞む位に輝いてました。小曽根真。
恍惚の時間が終わって、休憩をはさんで第二部はジャズ。
まず、1階の観客の出入り口から登場した小曽根真。1列目の席の観客全員と握手。
お隣の音大生っぽい女子たちが「いいなー!!」とはしゃいでいました。正直、既婚者のおっさん(失礼)の握手に10代後半~20代前半の女子たちがうらやましがりはしゃぐ姿に驚きました。
ステージにあがって一言。「選挙みたいですね」当時解散総選挙の真っ最中の時事ネタに笑う観客。
アンコールも含めて4、5曲くらい?正確な数は覚えていませんが、曲と曲の途中トークをはさんで完全な小曽根真ワールドです。
私はその時まで知らなかったのですが、ジャズってコントラバスもベースにするんですね。ピアノと手で鳴らすコントラバス、そしてドラム。その組み合わせが面白い。楽器の音の組み合わせも斬新で、楽譜よりも視線を合わせてリズムを取り合って、何より奏者が楽しそうで。見ているとわくわくするのです。曲に合わせてライトアップされた舞台も、一部のクラシックの時よりスペースが開いたのに、寂しさを感じさせない。余裕のある広さに感じます。
トークでは今回の舞台の裏話もいくつかしてくれました。
「不安の時代のアレンジをしたいと言ったら、都響に一度は『著作権があるので無理です』と断られた。だからバーンスタイン財団に直談判して許可をもらった」
「ピーター・アースキンは、僕が高校生の時、バイトでホテルのラウンジでピアノを弾いていた時に、見に来ていたらしい。なので、30代の時に『はじめまして』と僕があいさつをしたら笑われた」
「ラテン調の曲なので、誰かステージでボサノバ踊ってもいいんですよ」
などなど。トークがうまい…
曲の途中でわざと曲を止めて、終わったと見せかけて「騙されたでしょ、いいんですよ、それで」といたずらっぽく笑ったり。
とても上手に世界観に引き込んでくる。
アンコールはポップコーン・イクスプロージョン
ダレク・オレスのベースと、ピーター・アースキンのドラムバージョンだったのでだいぶ印象は違います。
「タイトルはポップコーンの弾けるような…って言わなくてもわかりますよね」と、また小曽根真が意地悪そうに笑って。その言葉のテンポから繋がるように始まった曲は、弾けるようにはしゃいだ音がして。
私はその曲中に、くらっと倒れるような、身体が宙に浮くような感覚を感じて。4階の席から、落っこちてしまうのではないかと、一瞬不安になった。(手すりがあるので本当に宙に浮かない限り、そんなことはありません)
思わず、自分の頭を抑えた。貧血?と思ったが、その浮遊感が終わって気づいた。
これは、脳内麻薬なんだ、と。
怖いくらいに、気持ちいい。のだと。
聴いているだけで、ここまで興奮できるのかと、自分でも驚いた。
会場が明るくなるまで拍手をして、少し酔ったような足取りで家に帰った。
これが私がジャス・クラシック・小曽根真にハマった理由です。